【パネリストインタビュー】リーム・アハマド氏(カイロ大学専任講師)
9月26日(土)に行われる、第2回パネルディスカッション『宗教を知ろう』に、イスラーム教のパネリストとして参加していただけるリーム・アハマド氏(カイロ大学専任講師)のインタビューを掲載します。
リーム氏の生い立ち、日本との出会い、ムスリムとしての生活などについて話を聞いてきました。
是非ご覧ください。
第2回『宗教を知ろう』パネリストインタビュー
カイロ大学専任講師 リーム・アハマド氏
中山:
本日はお時間頂戴しまして、ありがとうございます。インタビュー、よろしくお願いいたします。
リームさんはエジプトのご出身かと存じますが、日本に来られたきっかけは何だったんでしょうか?
リーム:
私はエジプトの首都であるカイロで生まれました。幼少期から親に私立学校を選んでもらった関係で、小さい時から言語に興味があって、学校では英語やフランス語を学びました。
そうやって勉強していく中で、それまで学んできたものとは全く違う言語を学びたい気持ちがあり、高校3年生の時に母の部下から日本語を勧められ、一気に興味が湧きました。その方は日本で大学院に通っていた方でした。
それまで日本語は学んだことが無く、記憶を遡ると小学校3年生の時にテレビで見た『おしん』ぐらいしか日本とのつながりはありませんでした。『おしん』に出ていた文字を見たときに縦文字に驚き、そんな言葉は10年経っても習得するのは無理だと思っていました。しかし、後から日本語学科に入学すると、日本語にとても惚れて、平仮名、カタカナ、漢字を一年生から学べました。
中山:
日本語を学び始めるのには、そういうきっかけがあったんですね。今ではリームさんは日本語が本当にお上手で、私が話すときも、難しい単語でも気を使わずに話をさせていただいています。
リーム:
とんでもないです。ありがとうございます。
私が文学部日本語日本文学科に申し込んだ年には、120人の申込があったそうで、その内の22人しか受かりませんでした。しかし翌年には、同学科に400人が申し込んだと聞きましたので、とても人気があったそうです。ちなみに少し前に話題になった小池百合子さんは、カイロ大学の先輩にあたります。小池都知事は同じ文学部の先輩ですが、社会学科だったので学科は違いますが。
中山:
確かに、小池都知事と先輩後輩の間柄になるんですね。それだけで人に自慢できそうです(笑)
カイロ大学では具体的にどういった事を学ばれたんですか?
リーム:
言語的な基礎はもちろん、日本の思想、文化、歴史なども学びました。大学3年時には、交換留学で日本へ行く機会があり、首席だったので留学先の大学を選ぶことが出来、先輩や大阪人の友達がいたため大阪外国語大学(現:大阪大学)に行くことを決めました。ただ、大阪と言えばミナミや梅田といった繁華街を想像していたのですが、大阪府箕面市の山の上にキャンパスがあって、私が持っていた日本のイメージとは全然違いました(笑)
中山:
それは残念でしたね(笑) 交換留学では、日本にはどれくらい滞在していたのですか?
リーム:
その時は1年ほどの滞在でした。カイロ大学に戻ってからは、卒業したら4年間の成績が1位の人が助手をするという取り決めがありましたので、卒業後、自動的に助手になりました。そこで5年以内に修士号を取らなければいけないこととなり、再度日本に渡り、研究生として東京大学に2年、その後上智大学の大学院に6年半通い博士課程まで修了することが出来ました。ちなみに、その上智大学院時代に、今の夫と結婚しています。彼は日本人ですが、知り合った時から私と同じようにムスリムでした。
今では日本滞在歴が12年あまりになりますが、カイロ大学でしっかりと勉強したことが基礎になっていることは間違いありません。事実、東京大学の研究生になるために日本に来て2週間経って日本語を話した時に、周りからは、来日して2週間だけでそんなに堪能に喋れるわけがない、と信じてもらえませんでした(笑)
中山:
大学で首席というのは素晴らしいですね。文法や言葉選びなんかも完璧なので、リームさんのお話しする日本語からもそれが伝わってきます。
上智大学の大学院を卒業した後は、どのような活動をしてこられましたか?
リーム:
1年度、カイロ大学で日本語の論文の学術的な書き方や翻訳の仕方の講義を受け持ちました。その後は日本に戻って拓殖大学でアラビア語やイスラム学、中東情勢などの講義を持ち、今は日本とアラブ諸国の関係について研究を続けています。
また、共愛学園前橋国際大学や南山大学などに招かれオンラインの講義を実施したり、イスラーム世界における女性の位置づけや、その歴史から現在までを紹介したりしています。
中山:
精力的に活動されていますね。
そもそもですが、リームさんとイスラーム教の出会いは何ですか?
リーム:
エジプトではイスラーム教徒が大多数を占めていて、私の家もムスリムでしたので生まれつきです。小さいころから毎日5回のお祈りをして、ラマダーン月には日中断食をして、周りからクルアーンやアッラーを唱える言葉が飛び交っていました。そういう風に私にとってイスラーム教は、生活の一部でした。
私は、イスラーム教は包括的な宗教で普遍性があると思っています。日本では『辛い時の神頼み』という言葉がありますが、私はそうではなくてずっと神と繋がっている感覚を持っていて、そのために祈りを続けています。
中山:
神と繋がっている感覚ですか。多くの日本人にはあまり馴染みが無い感覚かもしれません。
リーム:
そうですね。歴史的・宗教的な背景もあり、現在の日本の方々はそういった感覚は薄いのかもしれません。
中山:
そういった日本人が多い中、宗教について理解を深めるために行う『宗教を知ろう』ですが、リームさんがご協力いただけた理由を教えていただけますか?
リーム:
最初のきっかけは、サイード佐藤さん(昨年第1回のパネリスト)からのご紹介だったことです。そして企画内容をお聞きし、少しでも多くの人にイスラーム教の知られざる一面を届けられる貴重な機会だと思い、参加することを決めました。また今年のテーマは『死生観』と『性差』ということで、そこにも関心がありました。企画の柔軟さを感じます。
中山:
勿体ないお言葉、ありがとうございます。
最後に、観覧される方々へのメッセージをお願いします。
リーム:
最近では宗教のイメージが変化しているように感じます。ただ宗教は人の拠り所であり、精神的支柱であることは間違いありません。私たちは肉体と心を持っていますが、肉体にばかり目を向けていては物足りないと思っていて、心もとても大事なものです。
自分が良いと思う宗教に出会えると視野が広がり世界が変わると思います。
中山:
リームさん、ありがとうございました。
●リーム アハマド●
エジプト カイロ出身。カイロ大学文学部日本語学科を卒業後、研究員として東京大学へ。その後、上智大学の大学院で博士課程を修了。
NHKテレビでアラビア語講座などへの出演、拓殖大学や南山大学での講義などを通じて、アラブやイスラーム世界の紹介をしている。
●第2回『宗教を知ろう』概要●
■パネリスト
増田 琴(経堂緑岡教会 牧師)
リーム アハマド(カイロ大学 専任講師)
市橋 俊水(真言宗豊山派 常任布教師)
■司会
中山 龍之介(浄土真宗東本願寺派 法善寺副住職)
■日時
令和2年9月26日(土)
12:00~13:30
■会場
法善寺(東京都台東区東上野6-17-3)
※人の密集を避けるため、今年は会場観覧は上限20名までとさせていただき、それ以外の方は動画にて配信いたします。動画配信ツールは後日ご連絡いたします。生配信された動画は、アーカイブにも残す予定です。
■参加費
会場観覧:500円(当日支払い、上限20名)
動画配信での観覧:無料(上限なし)
■テーマ
①各宗教の死生観
②各宗教の性による区別
●観覧のお申込み●
メール、LINE、お電話などで、下記情報をお伝えの上、お申込みください。
・参加者氏名(複数の場合は代表者氏名)
・参加人数
・ご連絡先(ご自宅 or 携帯電話)
・ご希望の参加方法(会場観覧 or 動画配信)
※9月24日(木)17時〆切り
お電話:03-3844-7613
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