冥土/冥福とは
こんにちは。
法善寺副住職の中山龍之介です。
昨日と一昨日は暖かかったですが、今日は一転、寒い日が戻ってきました。気温もさることながら、強風のおかげで一層寒く感じます。
今年はインフルエンザの脅威だけでなく、コロナウィルスによる新型肺炎も拡散されています。昨日コンビニにマスクを買いに行っても、マスクだけがゴッソリと売り切れていました。一人でもご無事であること、そして早くこの脅威が過ぎ去ることを願います。
さて、本日は『冥土』と『冥福』について書こうと思います。
日本では有名人が亡くなった際に、テレビなどで『ご冥福をお祈りします』という言葉を見聞きします。最近ではSNSの普及から、一般の方もよくこの言葉を用いられます。
ちなみに海外では『R.I.P. (Rest in Peace 安らかにお眠りください)』という言葉が用いられます。『ご冥福~~』と違い、難しい言葉を使っていなくて、シンプルで分かりやすい表現ですね。
では実際、どれほどの方が『冥福』の意味を分かって使っているのでしょうか?
まず最初に言っておくと、浄土真宗では『ご冥福をお祈りします』も『安らかにお眠りください』も使いません。その理由もご説明します。
『ご冥福をお祈りします』の冥福とは、『冥土での幸福』という意味です。これだけ見ると、別に悪い意味ではなさそうですね。
では『冥土』とはどこでしょうか?
ざっくりと『あの世』や『死後の世界』と思われている方がほとんどだと思います。『死んだ後も幸福を祈って何が悪いんだ!』と突っ込みが入りそうですが、冥土の正確な意味を捉えてみます。
辞書によると、冥土とは『 死者の霊魂が行く暗黒の世界のこと 』だそうです。・・・少し雲行きが怪しくなってきましたね。笑
そして仏教的には、『六道輪廻の中のどこか次の世界』と捉えることが出来ます。ご存知の通り、仏教は六道輪廻を解脱することを目的とした宗教です。私たちの命は、天道・人間道(今の私たちの世界)・修羅道・畜生道・餓鬼道・地獄道の六道を輪廻していると考え、この六道をさまよっている内は苦しみから抜け出せない、そこから抜け出して仏様の世界(浄土)へ行くこと(往生)を目指す、これが仏教の教えです。
つまり冥土とは、六道の中の苦しみの世界であり、成仏して浄土往生出来ていないということになります。浄土真宗では、阿弥陀様を信じて『南無阿弥陀仏』と一度でも称えれば誰でも極楽浄土に往生することが出来る、という教えですから『ご冥福をお祈りします』という言葉は使わないんですね。
※私の勉強不足で他宗派の教義は分かりませんので、ご容赦ください。
また前述の通り、『安らかにお眠りください』も使いません。浄土真宗では、亡くなった方は仏となり、阿弥陀様の力によって現世に還ってきて私たち衆生を仏の世界へお導きになる、という教えがあります。これを還相廻向(げんそうえこう)と言います。ですので亡くなった方は、仏としてのお仕事があり、安らかに眠っているわけではない、ということです。
では、近しい人が亡くなった時に、遺族や故人にどのような言葉を掛ければ良いのでしょうか?
浄土真宗では『ご愁傷様です』や『お悔やみ申し上げます』など、家族を失ったご遺族に寄り添う形のお言葉を使います。また、亡くなった方自身には『ありがとうございました』など、生前の感謝の気持ちを伝えるのが良いと思います。
近しい人を失う悲しみは万人共通です。上記の言葉は、宗教・宗派関係なく使えると思いますので、ご参考にされていただければ幸いです。
※最後に、、、
このブログをお読みになった方でも、誰かが『ご冥福をお祈りします』と言っているのを聞いたからといって直ちに修正することはおススメできません。その方も悪気があって言っている訳では無いはずです。
南無阿弥陀仏
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