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ご遺骨への執着


法善寺副住職の中山龍之介です。


昨日の夜、ブログを書きながら体調の悪さを感じたのですが、一晩寝たら絶好調になりました。

今日の夕方、お寺から帰りながら体調の悪さを感じたのですが、家について水を飲んだら絶好調になりました。


単純な体で良かったと思いながら、今日のブログを書いています。今日も書きながら体調悪くなっても、寝るか水飲めばきっと治ります。みなさんも是非見習ってみてください。

 

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75年前の今日は

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さて皆さんご存知の通り、75年前の今日は長崎に『ファットマン』という原子爆弾が落とされた日です。8月6日の広島に続いての2発目で、その数日後の8月15日に日本は無条件降伏をすることになりました。


この時期になると『原爆は戦争を終わらせるために必要なかった』とか『原爆を落とす必要はなかった』とか、日本やアメリカで様々な意見が出て来ます。何十万人の命を奪った原子爆弾ですので、そりゃなかった方が良かったに決まっています。ただ、当時のことは当時生きた人じゃないと本当のところは分からないと思いますので、これ以上意見をするのはやめておきます。


事実としてあるのは、75年前の8月6日と9日に、多くの命が一瞬で奪われたという事です。


大学時代、授業で『原爆で亡くなった人の影』の写真を見たことがあります。原子爆弾の爆心地近くでは、一瞬で摂氏数百万℃に達するそうです。その場合、人間の体は焼き焦がされるどころか、沸点を超えて気体になってしまいます。すると原爆の爆心地近くで亡くなった人は『影』しか残らない、それを表すのがその写真でした。


大学時代の授業ですので、私以外はほとんどアメリカ人だったと思いますが、それでも、その写真を見て『oh my god...』という声が聞こえてきたのを覚えています(アメリカをかばうつもりはありませんが、アメリカ人全員が原爆必要派ではないんです)


正直言うと、若い時はこの時期にテレビを付けて『終戦○○年』とかやっているのを見ると、『いつまで昔のことを言ってるんだ』と思っていましたが、地球上で唯一の原爆被害国として、やっぱりこの事実を忘れるわけにはいきません。恐ろしさを伝えるためにも、語り継いでいかないといけないと思います。

 

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ご遺骨への執着

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原爆繋がりで言えば、小学校や中学校の時に学校の図書館で『はだしのゲン』をよく読んでいた記憶があります。漫画だったので読みやすかったというのが一番の理由な気もしますが、そこで原子爆弾のことを学んだのも事実です。


少し記憶があいまいですが、、、主人公のゲンが、家族を爆風によって亡くしてしまいます。ただ亡くなる前に自分はその場を離れなければいけなく、遺体を確認することができません。なかなか死を受けいらないゲンですが、そんなときに弟によく似た子供に会って、死んだはずの弟だと思い込んでしまうシーンがあります。


この時のゲンの心情は、先ほどの爆心地近くで亡くなった方のご家族や、東日本大震災で津波に巻き込まれ行方不明のままの方のご家族にも当てはまるものなのかもしれません。言葉を選ばずに言ってしまうと、『どう考えても死んでいる』と分かってはいても、ご遺骨を見るまでは死を受け入れられない、という気持ちだと思います(確かゲンも、後に現場を訪れてご遺骨を拾い上げるシーンがありました)


そう考えると、ご遺骨には死を受け入れさせる、不思議な力があるような気がします。やっぱり、いくら心臓が動いていないからと言って、生前の姿のままだと家族としては心が落ち着きません。ご遺骨になり、骨壺に収まり、納骨をする、という段階を踏むことで死を受け入れていくんだろうなと思います。


本来の仏教では、ご遺骨には大きな意味はないと説かれます。お釈迦様は、死んだら私の体はガンジス河に流せ、とお弟子さんに仰いました。同じように親鸞聖人も、死んだら賀茂川に流して魚のエサにせよ、とお弟子さんに説かれたそうです。


それでも残された者達はご遺骨を川に流すことはせずに(出来ずに)、お釈迦様のお骨は『仏舎利』として世界中に点在していますし、親鸞聖人のお骨は廟に納められ、その廟が本願寺の起源となっています。


ご遺骨に大きな意味は無いとは言っても、やはり執着してしまうというのが、残された我々人間の性なのではないでしょうか。現代にも残るお墓という制度は、そういった私たちの気持ちに寄り添ってくれるものなんだなーと最近感じています。


ただあくまで、こういった死生観は仏教的な視点が強いものです。キリスト教やイスラム教では、また違った死生観があるかもしれません。


9月26日の『宗教を知ろう』では、その『死生観』が一つのテーマになっています。私自身も話を聞くのがとても楽しみです。


まだまだお申込みを受け付けておりますので、興味のある方は是非よろしくお願いいたします。

 

 

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