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『宗教を知ろう』パネラーインタビュー サイード佐藤氏

こんばんは。

法善寺副住職の中山龍之介です。

本日は『宗教を知ろう』にパネラーとしてご協力いただける、日本ムスリム協会理事の佐藤様のインタビューを掲載させていただきます。

佐藤さんの生い立ち、海外遍歴、イスラム教との出会いなどをお聞きしました。インタビューは東京ジャーミーという、代々木上原にあるモスクで行いました。

是非ご覧ください!

 

『宗教を知ろう』パネラーインタビュー

日本ムスリム協会理事 サイード佐藤氏

中山:

こんにちは。本日はお時間頂戴しまして、誠にありがとうございます。

お話をお伺いする前に、いま東京ジャーミーに併設されている『ハラールマーケット』というスーパーにいるのですが、お肉からスイーツまで、様々なものが取り揃えてあって、びっくりしました。

佐藤:

私もこのお店には初めて来たのですが、想像していたよりも充実した品ぞろえで驚いています。食品類はすべてハラールなものですので、私たちムスリムには安心して口にできるものばかりです。私はモンブランを食べていますが、スイーツに良く使われているゼラチンやある種の乳化剤、アルコールを用いたものは避けていますので、このようなお店があるのはとても良いですね。なお、ムスリムでも人によって食の基準は微妙に異なります。

東京ジャーミー内の『ハラールマーケット』

中山:

すみません、私はレアチーズケーキをごちそうになっています笑。普通のチーズケーキと遜色ないと言いますか、むしろこちらの方が美味しいくらいです。

佐藤:

そうですか、それは何よりです。笑

中山:

佐藤さんは小さい時からイスラム教に関わる生活を送っていたんですか?

佐藤:

いえ、そういうわけではありません。

私は福島県郡山市の出身で、父は会社員の家庭で育ちました。家族でお寺にお墓参りにも行っていましたし、一般的な環境にいたと思います。ただ小さい時から宗教心みたいなものは持ち合わせていて、この世界・宇宙を司る存在はいるに違いないと思っていました。特に何かきっかけがあったわけではないのですが、そういった存在に見守られていると感じていました。

中山:

中学や高校時代、ご自身はどのような学生でしたか?

佐藤:

走り高跳びのフォームの芸術性に惹かれ、中学では陸上部に入りました。最初は120cmくらいしか飛べなかったですが、最後の大会では180cmまで記録を伸ばして地区優勝することが出来ました。他の中学に2年の頃から活躍し、ライバル視していた人がいたのですが、その人に追いつくために腹筋を800回したり、とんでもない練習量をこなしていたのを覚えています。

高校に入ってからは、こちらも芸術性に惹かれてボクシングを始めました。今考えると、イスラム教では人間の体の中で大事なところとされている顔を殴ることは、あまり良くないことでした笑。またこの頃から、人生の生き方に関する本を読み始めました。

大学進学時、経済や政治などには興味がなく、東洋大学のインド哲学科に入りました。インド哲学科ですと主に仏教の話をされるのですが、そこにはあまり興味を持つことが出来なく、また周りもあまりモチベーションが高くなく、一緒に麻雀なんかをして過ごしていました笑。

そんな生活には満たされなかったので、バックパッカーとなりインドや中国のウイグル自治区に行きました。ウイグルでは現地のイスラム教徒と仲良くなり、ご飯をごちそうになったりする中で、イスラム教への勧誘も受けました。

中山:

そこでイスラム教に改宗されたのですか?

佐藤:

いえ、そのタイミングでは改宗しませんでした。ただその後、日本に帰国したときに東京のイスラミックセンタージャパンや日本ムスリム協会と言った組織に色々な書籍や小冊子などを頂き、自分の中でしっくり来るものがありました。この頃の私はちょうど迷いの時期にいて、それまでの人生をやり直したい、新しい人生を真っ白なページから始めたいという気持ちになりました。

その後、地元からも近い仙台で仕事をしていたのですが、そこのイスラミックセンターでとても敬虔なパキスタン人留学生と知り合お、イスラム教について手取り足取り教えてもらいました。そうしていく内に、私自身の中にもイスラム教をきちんと学びたい欲が強くなっていくのを感じました。

中山:

イスラム教の勉強はどのようにされたのですか?

佐藤:

イスラム教の聖典であるクルアーン(コーラン)はアラビア語で書かれていますので、まずはアラビア語を勉強しなければいけません。私としてはサウジアラビアに行きたかったのですがなかなか難しく、まずは仙台で出会ったパキスタン人のつてでフランスに行き、フランスとその近隣諸国のイスラム教徒が通う全寮制の学校に通いました。それが25-6歳のころです。

1年ほど通ったのですが、アラブ留学の夢は諦められず帰国し、サウジアラビア大使に会って留学希望を直訴しました。そして、それなら元麻布にある大使館付属のアラブ イスラーム学院が良いと言われたので、その足で学院に行き、また話をしました。

中山: すごい行動力ですね。。。そこで晴れてアラブ留学が許可されたのでしょうか?

佐藤:

いや、そう上手くはいきませんでした。留学の前に、まずはここで働きながらアラビア語を学びなさいと言われ、守衛として働きながら昼間は学校に通っていました。フランスでの勉強も考慮していただき、1年間で元麻布にある大使館付属のアラブ イスラーム学院は卒業したのですが、サウジアラビアへの留学の許可は下りませんでした。ただ分校があるモーリタニアかインドネシアには行けるとなったので、より勉強に適していると思ったモーリタニアへ行きイスラム法学部に入りました。無事に留学生活を送れると思ったのですが、やはり当時は私の知識も浅く、また教授も板書はせずに口頭で話をして終わり、というスタイルでとても苦労しました。

中山:

そういうスタイルの教授は、私もアメリカの大学で経験したことがあります。特にまだ言葉に慣れていないうちは大変ですよね。

佐藤: そうですね。そんなこんなしている内に、なんとクーデターが起こってしまい学校が閉校となりました。そしてそのタイミングでサウジアラビア本校への留学が許可され、念願のアラブ留学が叶いました。2003年頃の話です。

サウジアラビアでは結局10年ほど過ごし、宗教原理学やクルアーン(コーラン)学を勉強しました。修士課程まで進んだのですが、クルアーンの日本語訳に時間を費やしてしまったので、結局修士号までは取らずに帰国しました。

中山:

ついに日本に帰国されるわけですね!帰国後はどのような活動をされていますか?

佐藤:

日本に帰ってきてからは元麻布にある大使館付属のアラブ イスラーム学院で働いています。イスラム教の理解を広めることはもちろんですが、アラビア語を教えたり、イスラム文化を紹介したりしています。具体的には、ラマダン(断食)月が明ける日に一般の方々に集まっていただき、ラマダン明けの食事を体験してもらったり、ミニ講話ライブと称してアラビア語でコーランを聞いてもらったり、様々な企画をしています。また最近ではイスラム教関連のコンテンツや、テレビ番組作成の協力なども行なっています。

中山:

とても精力的に活動されていて素晴らしいですね。改めてお聞きしたいのですが、今回の『宗教を知ろう』へご協力いただけた理由は何でしょうか?

佐藤:

まずはイスラム教を紹介させていただく良い機会だと思いました。イスラム教だけでなく、他の宗教も一緒に、と言うのがミソだと思います。参加者の方々にはそれぞれを比較しながら聞いていただけると思います。また私自身、他の宗教を知りたいという気持ちがあります。こういった気持ちが、今回『宗教を知ろう』へご協力させていただいた理由です。

中山:

そう言っていただけると、本当にありがたいです!

最後に、参加者に向けてメッセージをお願いいたします。

佐藤:

今の日本では宗教に親しみを持っていない方も多いと思いますが、宗教だけでなく、異なる物を知ることにはとても価値があります。この現代において、異なる他者との付き合いは避けられません。多様性が求められ、平和共生という視点からも、そういった方々とどのように付き合うかが大事になってきます。

特に今回並ぶ三つの宗教は、世界的に見ても信者の数がとても多く、世界中のそれだけの人々の精神に影響を与えています。他者を知ることで自分が一番得をし、他の宗教を知ることで自分の宗教の自覚が生まれます。そういったことを、今回のパネルディスカッションでは感じてもらえればうれしいです。

佐藤さん、ありがとうございました!

サイード佐藤(さいーど さとう)

1973年福島県出身。中国・ウイグル自治区でイスラム教と出会い、その後モーリタニア、サウジアラビアへ留学をしてイスラム教を学ぶ。2013年に帰国してからは元麻布にある大使館付属のアラブ イスラーム学院で研究員として働く。また日本ムスリム協会の理事も務め、イスラム教やイスラム文化の発信をしている。

●『宗教を知ろう』パネルディスカッション参加申し込み●

お電話 (03-3844-7613)またはメール (houzennji.nakayama@nifty.com)で参加される方の氏名、ご連絡先をお伝えください。

当日受付可ですが席数に限りがございます。ご注意ください。

ご質問等ございましたら、上記の連絡先より受け付けておりますのでお気軽に。

●『宗教を知ろう』詳細はこちら●

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